鍛錬の先で、求めていた答えが見えてきた。

無

杉田廣貴

杉田廣貴

井口潔

先月お会いした93歳の井口潔医学博士の主催する『これからの教育を考える合宿』に参加した。

九州大学の名誉教授にして、日本外科学会の名誉会長。

その実績たるや、ほんとうに素晴らしいものですが、

ご本人は誰に対してもフラットであり、

公人としての一流の姿を私に見せてくださいました。

 
 

ほんとうに有難いことに、

福岡だけでなく、東京から、

全国で有名な医師、経営者、講演家、教育者など50名超が集まる中、

『招待書道家』という役を担うことになった。

 

今回のテーマが『無の境地』という事もあり、

私の大書揮毫の在り方が、それに近いということで、参加している教育者の1人で友人の本垣内先生が提案くださった。

93歳を中心に、私の数倍も生きた諸先輩方を前にして、

大書を揮毫することは少し緊張もあったけれど、

 

『無』の一文字を制作した5分間。

皆が息をのむほど、胸がきゅーっとなるほど、魂が伝わったと言っていただけた。

墨液を入れるその音にも、『魂』を感じたと言ってくださる方もいた。

 
 

すべての物に”命”が宿る。

 
 

これは、私が初歩の段階から、ずっと大切にしている日本の価値観。

私の手、声、身体だけでなく、墨にも紙にも、命がある。

ここの空気、観ている人の細胞ひとつひとつにエネルギーをかけるように集中した1枚を思う。

今回は、その全てが伝わったことが一番ありがたい。

たとえ下手だろうが、その一瞬に全身全霊を込められたのであれば、

その作品は、きっとずっと残っていく。

 
 

今回、終わったあと、空手の世界で有名な方を紹介したいと言ってくださる方がいたり、

今のスタイルに対して、助言をくださる方もいた。

その内容をきいて、

まさに、私が求めている作品制作の基本だった。

アドレナリンを出して書くのではない、本物の全身全霊の方法を聞けた。

これから先の制作に活かして、稽古して、毎日に繰り返していこう。

道の探究は、ほんとうに楽しい。

この基本を体得したら、

おそらく

一本の線だけで人の心を動かすという、私の思い描いていた作品が一歩目を踏み出せそう。

これからも稽古を続けていこう。

93歳の方が、稽古を今も続けているのだ。

私に出来ないことはない。

 
 

こうした学びは、やはり海外にいては学べない。

日本、アジアには、それだけの深い歴史がある。

杉田廣貴