2022/09/16 – 30
GOLDFLOG COFFEE
11:00 – 21:00 / 火曜定休
ご挨拶
この度GOLDFLOG COFFEEにて、書道家・アーティスト 杉田廣貴の個展「INTO THE NOISE」を開催いたします。書道や抽象アートで表現をした作品計18+小作品20点を展示いたします。線やストロークの空間性やマチエールのみならず、社会背景やコンセプトにもこだわり、現代社会を取り巻く問題にフォーカス、表現を追及します。本展では、ノイズを軸に置き、ウクライナ侵攻などから思考し、作品を制作しました。ぜひご高覧ください。
杉田より
本展によせて
私は、「存在の肯定」をコンセプトとして作品を制作しています。この世界で起きる物事や事象、東洋や西洋の思想や文化を、自分のフィルターを通して見つめ、作品にアウトプットします。表現を通じて、世の中にある「存在」を多面的に捉える視点を大切にし、肯定することで見える世界を作品に残したいという思いがあります。
私たちは善悪、表裏、陰陽などの2面で物事を捉える癖があります。しかし、たった2面で捉えるにはもったいないほど、世界は多種多様な視点で溢れています。私は、様々な視点の一つ一つにフォーカスし、感じた概念を作品に落とし込んでいます。
本展では、ノイズに着目し、作品を制作しました。「INTO THE NOISE」というタイトルは、自分自身がノイズの世界に入り込むことで、制作を行なった視点を、作品を通して鑑賞者と共有したい思いから生まれています。
制作するにあたり、今どうしても無視することのできない、ウクライナ侵攻やベイルート港爆発事故など、それぞれの事象から生まれた音やSNSを通じて出会った画像・投稿と向き合いました。今回の新作には、戦争というテーマが大きく反映されています。
戦争や爆弾などをノイズの軸にしていますが、脅威として描くのではなく、漫画の描き文字などを活用しました。
そうする事で、SNSでの人々の反応を見て感じた
日本人にとっての戦争への「リアル」を意図的に表現しています。
日本人の多くは戦争を、漫画の描き文字のようであり、ゲームや映画のように実感がないものとして捉えているように感じます。
現場でのリアルとは違い、どこか絵空事の世界のように見ているのではないでしょうか。
9/21には、ロシア政府の声明で「18〜35歳の男性を兵士として徴兵する」というニュースが走りました。
現在も、この地球で、戦争という脅威に晒されている人々がいます。
そうした視点を作品に落とし込むことも大切にしながら、危険性だけを訴えるのではなく、あくまでポップに表現しました。
ここには、漫画やゲーム、映画のように、
どんな恐怖や脅威も、
幸せな「視点」に上塗りすることができる「可能性」を示唆しています。
どんなに大変な出来事が起きたとしても、
人々には、幸せで美しいカラーに上塗りする力があります。
現在起こっている社会の問題も、戦争も、大変革も。
最後の20点の作品「Viva la vida(人生万歳)」のように、上塗りすることで、より良き未来に進める。
その希望を、この展示会ではメッセージとして伝えています。
ぜひ、ご体感ください。
作品の販売について
展示作品は購入可能です。
展示期間中(2022.09.16〜30)は、ギャラリーに直接お問い合わせください。
展示会・壁面マップ
作品リスト
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1、
爆撃
H85.5 x W30cm 2点セット
2022
紙に、墨。掛け軸。「爆」という文字を逆さにして、二つに割っています。これは、ウクライナ侵攻でのロシア軍による焼夷弾の動画で見た「爆弾」をモチーフにしています。爆弾が割れて落ちながら光を放つ姿は、脅威とともに、美しくもありました。その感覚の恐ろしさと落ちる様を、二つに割った掛け軸で表現しています。
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2、
響
H170 x W53cm
2022
紙に、墨。掛け軸。戦争では、空から轟音が響きます。その音を生で聞くのは、いつも現場の地上の人々です。インターネットからでは本当の音が聞こえません。そのため空を空白にし、地上に響く音を「響」という文字で表現しました。
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3、
爆心
H52 x W52cm
2022
紙に、墨爆弾が落ちた瞬間の、飛び広がる「火の粉」を点で表しています。戦争で、人々が命を落とす「爆心」ではなく、生活の中で、人々を活かすことができる情熱的な「爆心」になることも、私たちにはできます。あなたはどちらの点を選択しますか?
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4、
BANG!!
H50 x W50cm
2022
紙に、墨強い音が響いた時、リアルでは人々は恐怖を抱くと思います。しかし、漫画や映画、ゲームでは今日も「BANG!!」が飛び交います。人々には、恐怖を娯楽に変える力があります。戦場での痛みを表現するため、古くなり傷んだ紙で制作。アメコミの描き文字「BANG」をモチーフにしています。
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5、
ざわ・・・
H34 x W58cm
2022
紙に、墨ウクライナ侵攻が始まった時、また、情報が更新されるたびに、SNSもざわつきます。しかし、現地にいない人の実感のない声であることが多いです。ある意味、私たちが感じているリアルは、漫画の描き文字が表すように、違う世界の出来事です。漫画「カイジ」の「ざわ・・・」という描き文字をモチーフに制作しています。
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6、
ドォン
H35 x W63.5cm
2022
紙に、墨爆発の音です。いまの日本人にとっての戦争へのリアルを表現するために、漫画をモチーフにしています。濃淡を最も生かした作風で、ノイズを表現。漫画「ワンピース」の爆発音「ドォン」の描き文字をモチーフに制作しました。
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7、
ゴゴゴゴゴゴ・・・
H86.5 x W34.5cm
2022
紙に、墨戦場に行くと、地鳴り音が聞こえてきます。それは風や雷ではないですが、風や雷のようにも聴こえる不思議な音です。漫画で表現することで、私たちが感じているリアルを表現しました。漫画「ジョジョの奇妙な物語」を筆頭に、さまざまな漫画で使用されている描き文字「ゴゴゴゴゴゴ・・・」をモチーフに制作しました。
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8、
風號(ふうごう)
H70 x W53cm
2022
紙に、墨先述の「ゴゴゴゴゴゴ・・・」の関連作品。風の音も時折「ゴゴゴゴゴゴ・・・」と聴こえてきます。その風の音は、まるで風神が叫んでいるかのようです。風神が羽衣をかけて堂々と立っている様を「風」の文字で表現しています。
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9、
雷轟(らいごう)
H70 x W53cm
2022
紙に、墨先述の「ゴゴゴゴゴゴ・・・」の関連作品。「風號」の連作です。空で雷が轟く様を「雷」の文字で表現しています。
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10、
無
H42 x W42cm
2022
紙に、墨戦争では多くのものを失います。苦しみも悲しみも、やがて無くなる様をシンプルな「無」で表現しています。
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11、
日
H20 x W20cm
2022
紙に、墨戦時中も、その後も、変わらず太陽は登ります。人間が生む所業のちっぽけさを表現するため、シンプルな文字で表現。ノイズを表すため、濃淡を活かせる紙で書いています。
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12、
美
H20 x W20cm
2022
紙に、墨戦時中も、その後も、美しいものは美しいです。どんなものにも美しさは存在するということを表現しました。ノイズを表すため、濃淡を活かせる紙で書いています。
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13、
花
H20 x W20cm
2022
紙に、墨戦時中も、その後も、どんなに荒れた場所でも花は咲きます。その命の強さを優しく表現しています。
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14、
心
H20 x W20cm
2022
紙に、墨戦時中も、その後も「心」は存在します。現場でもそれ以外でも、「心」は存在します。その心が「灰色」にならないように願い書きました。
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15、
海
H200 x W158.8cm
2017 + 2022
紙に、墨(背景は、キャンバス生地や紙にアクリルと墨)ノイズたちを「海」に流す表現をするため、2017年に制作した「海」をメインに展示しました。背景には、Twitterなどで見かけた言葉たちを表現したキャンバス作品、足元には書道の書き損じたちを散らばらせています。さまざまな言葉たちが「海に流されていく姿」を全体的に表現しています。背景作品は、今回のために制作しました。
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16、
THE BORDER
H100 x W80.3cm
2021
木製パネルに紙、墨とアクリル神社仏閣へのお篭りや奉納などを通じて、無意識の領域を探究し、その中で見えた「欲やエゴ」との境界線を考察。実はボーダーラインはなく、全てが表裏一体であることを実感し、その中で見えた景色をモチーフに表現しました。無意識をグレー、欲やエゴをカラーで表しており、赤は情熱や血のイメージで制作しています。
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17、
THE PRESENCE(存在)
H120 x W120cm
2021
ステンレス高野山のある寺で出会った「姿見の井戸」。過去には、浄土真宗や浄土宗の開祖が毎朝自分を見つめるために使っていたと云われています。その姿見の井戸の「水面」から連想し、自分自身の存在を認識するための作品を制作しました。この作品にはもう一つメッセージがあり、現代のSNSやインターネット社会には「本当のリアル」はどこにも無いことを表現しています。加工された女性の顔写真、フェイクニュース、そうした情報をあたかもリアルのように感じ、生活する私たち。この作品では、見えない事への危惧とともに、「本当の姿が見えない」ことの美しさも表しています。
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18、
THE INTERVAL
H116.7 x W91cm
2021
木製パネルに紙、墨とアクリルこれまで無意識の領域を探究してた中で、「欲やエゴ」と「無意識」は常に融合を行なっているように感じました。どちらも必要で、どちらも自分。そうした融合する空間のことを、日本語の「間(INTERVAL)」と捉え、融合する「間」を表現しています。無意識をグレー、欲やエゴをカラーで表しており、赤は情熱や血のイメージです。
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19、
Viva la Vida 001~020
H18 x W18cm
2022
キャンバスに、アクリル作品の下地として、ベイルート爆発事故の画像をモチーフに「爆発」を描きました。その上から、ColdPlayの楽曲「Viva la Vida」のライブ動画に使われていた鮮やかな色を、同じように「爆発」した描写として上塗りしています。この楽曲の歌詞は、フランス革命で国を追われた国王の人生を語っており、タイトルには「人生万歳。美しい生命。」を意味するスペイン語が使われています。過去に起きた出来事は上塗りして、より良い視点で解釈できる人々の可能性を感じました。この作品では、同じようにレバノンで起きた悲しい事故に対して、上から美しいカラーを上塗りすることで、私たち人間が「過去を塗り替える」行為を続けてきたこと、その素晴らしさを表現しています。
個展の写真
PROFILE
書道家・アーティスト
杉田 廣貴(スギタ コウキ)
1983年3月宮崎県生。鹿児島大学工学部卒。在学中に書を媒体に表現活動を始める。神社仏閣などにて東洋文化や思想を学ぶ。2013年には渡米し、書家としての活動の傍ら、西洋美術との融合を模索。ヒルトンやヴァンクリーフ&アーペルなどの世界的企業や、アメリカの美術館、神社仏閣へも作品を収めてきた。「存在の肯定」をステートメントに、国内外で表現活動を行なっている。
Special Thanks
個展開催において、サポートをくださった皆様です。
上海堂様
展示会内の書道作品の表装と、会場内の作品設置をしてくださいました。
いつも、書道作品の額装もわがままを聞いてくださいます。ありがとうございます。
大森和枝様
展示会の空間デザインやディレクション、作品設置、文章の校閲等もしてくださいました。
世界観を、皆様へ分かりやすく伝えるためのサポート、ありがとうございます。
お祝いの花、ありがとうございます。
株式会社 武蔵様
杉浦商事株式会社様
株式会社Riche様
白水様
川野様